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スカイプを通じて会った女性との思い出
私は一時期、スカイプでの通話にハマっていました。というのも当時、恋人がおらず、親しい異性の友人も持たなかった私にとって、スカイプは異性と会話のできる数少ない機会だったからです。
私は暇さえあれば、話し相手募集の掲示板から、気の合いそうな女性を探していました。何人もの女性にメッセージを送り、通話に誘いました。しかし、悲しいかな、ほとんどの人が通話に応じてくれません。応じてくれても、話が合わなかったり声が好かれなかったりして、すぐに切られてしまうことも珍しくありませんでした。
そうしたなかで、たびたび通話に応じてくれる女性が一人いました。私はいつしかその人とばかり通話するようになっていました。通話のたびに私たちは親しくなっていきました。これといった共通の趣味はありませんでしたが、何気ない話題に大いに盛り上がりました。私はいっそ、実際に会って話してみたいと思い、あるとき彼女に通話のなかで、冗談交じりにその旨を伝えました。すると彼女は意外にも、あっさりと誘いに応じてくれました。知り合ってから二月目でのことでした。
彼女の住まいは、幸い私の住む県のお隣でしたので、誘った私のほうから彼女の県へむかいました。私たちは、ある街の繁華街にあるカフェで待ち合わせをしました。ビデオ通話をしたこともあるのでお互いに顔はしられています。私がお店に入ったとき、彼女はすでに席についていました。彼女とはじめて対面したときの、嬉しいような気恥ずかしいような思いを、私はいまでも覚えています。私たちはそれからそのカフェで二時間ほど話しました。私はディナーにも誘いましたが、すでに先約があるということなので、あきらめてそこで別れました。
それからも、私たちはときどき通話をしましたが、以前のように長続きすることはすっかりなくなりました。彼女がいつも、早々に切り上げてしまうからです。私はそれでもめげずに誘いつづけましたが、断られることも多くなったので、ある日とうとう決心し、もう二度と話すまいと、連絡先から彼女の名前を消しました。私たちの短い付き合いは、それで幕切れです。
私はいまでもどうして彼女が私を見限ったのかわかりません。実際に見た私の顔や雰囲気やしぐさが気に入らなかったのか、会ったことでふと冷めてしまったのか、ネットを通じての出会いに後ろめたさを感じたのか、それらが重なって嫌気がさしたのか……。いずれにしても、もはやその答えを知るすべもありません。
しかし私は彼女とのことで、ネットを通じた出会いの楽しさを知りました。事実、寂しさは大分まぎれました。最後には若干、にがみを味わいはしましたが、この経験は決して無駄であったとは思いません。とはいえこの思い出は、いまだ誰に話すこともなく、私の胸の中にしまったままです。